活動施策



アガリクスの栽培 第4回


みなさま、こんにちは!
前回までに菌糸の培養までをご説明しました。
今回は、いよいよアガリクスの子実体が培地から顔を出します。
 
キノコは長い時間をかけて菌糸の状態で増殖します。
ところが、何らかの環境の変化、たとえば、「温度」「湿度」「創傷」「飢餓」などにより生命の危険を受けると子実体を形成します。
もちろん、ここで言う生命の危険とは、われわれ人間の立場で傍目から見た状況です。
 
しかし、実際、その様子は子実体を形成し胞子を遠くに飛ばすことで子孫を残そうとする生物本来の姿に思えてなりません。
いずれにしてもキノコ栽培では、この原理を応用します。
以下、三例をあげましょう。

・菌掻き
エノキタケ、ヒラタケ、エリンギなどの栽培で行われる方法です。

写真10.菌掻き前   写真11.菌掻き後   写真12.発芽
写真10.菌掻き前   写真11.菌掻き後   写真12.発芽

菌掻きによって菌糸が傷つき、それが刺激となって創傷面にキノコの芽が出てきます。
※写真のキノコはシメジの一種。

・温度変化
温度変化は単独で行われることはほとんどなく、『菌掻き』や次にご紹介する『覆土』などと併用されます。多くの場合、培養温度より5℃程度下げることによってキノコの発芽が促されます。例外的に薬用キノコとして有名な霊芝(レイシ:マンネンタケ)は25℃〜30℃という高温度帯で旺盛に子実体が生長します。

・覆土
このサイトの主役であるアガリクスをはじめ、食用キノコのマッシュルームなどは菌糸の培養が完了した培地の表面を土で覆うことによって発芽が誘導されます。
このときの土はキノコにとって貧栄養のものです。
擬人的に言えば、飢餓のような錯覚に陥り、「早く子孫を残さなければならない」と思うのでしょう。

写真13.アガリクスの菌床栽培における『覆土』
写真13.アガリクスの菌床栽培における『覆土』

『覆土』された培地は、温度23℃前後、湿度90〜95%RH、CO2濃度1,500ppm以下の環境で栽培が続けられます。
覆土後、14〜18日で表面にアガリクス子実体の芽が現れます。

写真14.覆土後20日目の様子
写真14.覆土後20日目の様子
<アガリクスの話>

・アガリクスの栽培 第1回
・アガリクスの栽培 第2回
・アガリクスの栽培 第3回
・アガリクスの栽培 第4回
・アガリクスの栽培 第5回
・アガリクスの栽培 第6回
・アガリクスの栽培 第7回