活動施策



アガリクスの栽培 第2回


みなさま、こんにちは!
前回は『種菌』の重要さと管理について述べました。
第2回は『培地』についてご説明したいと思います。


キノコは栄養要求性の観点からふたつの種類に分けられます。

① 菌根性菌(マツタケ、ホンシメジ、ヤマドリタケなど)
② 腐朽性菌(シイタケ、エノキタケ、マッシュルームなど)

@ は、植物の根とキノコの菌糸が「菌根」を形成し、植物の根から必要な栄養を受け取り生育します。たとえば、よく知られた例としてはマツタケと赤松が菌根をつくり、赤松からグルコース(ブドウ糖)などをもらい、一方、マツタケは植物ホルモンを赤松に与えて生きています。言い換えれば、進化の過程でみずからグルコースをつくる能力を失ったとも考えられます。そのため、人工的に菌糸の増殖はできるけれどもキノコの発生条件を探り出すことが非常に困難で、まだ当分、『マツタケの人工栽培』は成功しないと思われます。例外的にホンシメジに関してはすでに商業規模で栽培が行われています。


A は、キノコの菌糸がセルロースをはじめ、いろいろな酵素を分泌し繊維質やたんぱく質などを分解して、生きていくために必要な栄養をみずからつくっています。ただし、原料となる木材や落ち葉などはキノコによって分解されていくため腐朽します。腐朽性菌の場合、もともと他の生物から栄養を受けなくとも生育する能力を持っていますので、上記の菌根性菌とは異なり、キノコの発生条件を見つけるのはそれほど難しくありません。食用キノコとして盛んに栽培されているのは腐朽性菌に属するキノコたちです。

さらに分別すれば『腐朽性菌』でも、木材を腐朽し枯れ木などから発生するキノコ(たとえばシイタケ)と、落ち葉などを分解し土壌から発生するキノコ(たとえばマッシュルーム)があります。

アガリクスは、これらのうち土壌から発生する腐朽性菌の一種です。


なお少し話を戻して、『アガリクス』という名称ですが、厳密に言えば『ハラタケ科ハラタケ属』のキノコ全般を指しますので、私たちが呼ぶAgaricus blazei Murrillもこの仲間です。ほかに代表的なキノコは世界で最も栽培量・消費量ともに多いマッシュルームが挙げられます。
アガリクスに限らず、キノコ栽培において栽培に用いる培地原料は品質管理という面から非常に重要です。

それというのも、キノコは生育する樹木なり、土壌なりの成分を吸収する性質があるからです。旬の季節に野生キノコの採取を楽しみ、はっきりと毒性がないことが分かっている食用キノコを何本か食べる程度ならそれほど神経質にならなくてもよいのですが、常食するなら別です。

私たちが特に注意するのは重金属類と残留農薬です。
栽培工程で農薬(薬品類)を使用しないのは当然だとしても、原料に農薬が含まれているというようなことでは失格です。
アガリクスの栽培方法にはマッシュルーム栽培に準じた『堆肥栽培』やいろいろな原料を配合した培地を高温高圧滅菌して行う狭義の『菌床栽培』などがあります。
しかし、いずれの方法による栽培でも最終産物であるアガリクスの品質を安全に維持するためには、培地の安全性が担保されなければなりません。
以下に培地の重金属類と残留農薬の分析結果の一例を示します。

表1.培地の重金属類分析
培地の重金属類分析



表2.培地の残留農薬分析
培地の残留農薬分析

いずれも「検出限界未満」「検出されず」でなければ培地として使用しません。

<アガリクスの話>

・アガリクスの栽培 第1回
・アガリクスの栽培 第2回
・アガリクスの栽培 第3回
・アガリクスの栽培 第4回
・アガリクスの栽培 第5回
・アガリクスの栽培 第6回
・アガリクスの栽培 第7回